近年にない暑さが続き、夏も本番という季節がやってまいりました。
皆様いかがお過ごしでしょうか?
先日、私用のため実家へ寄ることがあり、現在は使われていない自分の部屋を久々にのぞいてきました。
昔と変わらない配置で机と本棚が時間に取り残されるようにそこにありました。
壁のポスターもそのままです。
母親は勝手に整理すると僕が怒るからそのままにしていると言っていました。
確かに自分が高校生の時など、部屋を掃除されるとよく怒っていました。
そのくせ自分では掃除などしないため、見るに見かねて母親がしていたのでしょう。
ふと本棚に目をやると懐かしい本がありました。北杜夫著の「どくとるマンボウ航海記」です。
小学校6年生のときに父親の部屋から変なタイトルの本だなと思い手に取ったのがきっかけでした。
小学生の私が読んでも、十分おもしろい内容で、本を読む楽しさを教えてくれたのがこの作品でした。
それから北杜夫という作家に夢中になりました。
どくとるマンボウシリーズとは全然違う雰囲気の純文学の彼の著作は本当に同じ作者なのかと疑ったものです。
懐かしさで用事を忘れ、航海記を読み始めました。
何度も読んだ内容ですが、忘れているところも多く懐かしさもあり一気に読んでしまいました。
彼の文章は何か一定のリズムのようなものがあり、また思わずニヤリとするユーモアがちりばめられており、それがすごく読みやすく心地よいのです。
北杜夫の作品からその繋がりで遠藤周作や星新一、辻邦生、ムツゴロウこと畑正憲やトーマス・マンなど本の世界が広がりました。
「どくとるマンボウ航海記」を発表されたときの年齢が33歳。
芥川賞の「夜と霧の隅で」も33歳での受賞でした。その年齢を私はいつのまにか過ぎているのだなと本を手にしていろいろ考えてしまいました。
最近は本を読む機会が少なくなりましたが、時間を見つけて本を読もうと思いました。
夢中になれる作家と思春期に出会えたのは幸福なことだったと今になって思います。
皆様のおすすめの作家や本があれば教えてください。
摂津院 院長 宮地 久崇