今年の9月も、ニュースにこの言葉が躍りました。
『イグノーベル賞、日本人が受賞』
1991年の第1回の開催からこれまで、日本人の受賞はほぼ常連であり、今年の受賞で19年連続受賞となる、イグノーベル賞。
「人々を笑わせ、考えさせた研究」に贈られる科学賞で、毎年ユーモラスな研究が取り上げられています。
2025年の日本人受賞は「ウシにシマウマのような縞模様を描くことでアブに刺されるのを避けられるかを検証した実験に対して」という研究に対する生物学賞。
ユーモアたっぷりのスピーチで、会場は笑いに包まれました。
さて、そんなイグノーベル賞。
これまでの30余年の歴史の中で、たった1度だけ、『歯学賞』なる賞が存在したことはご存知ですか?
『歯学賞』を受賞したのは1995年、『患者がワックスの塗ってあるデンタルフロスを選ぶか、あるいは塗っていないものを選ぶか』というロバート・H・ビューモント氏らの研究です。
デンタルフロスとは、歯ブラシでは届かない歯と歯の隙間の清掃に使う清掃用具の一つで、細くより合わされた糸で歯垢を取り除く役割を持ちます。
歯ブラシでは届きにくい隙間をきれいにするために欠かせません。
デンタルフロスには、大きくワックス付きとワックスなしの違いがあります。
糸に薄くワックスがコーティングされています。
滑りが良く、歯と歯の間に通しやすいのが特徴です。
コーティングがない分、歯の表面に「引っかかり」が出やすく、歯垢を絡め取る力が強いとされています。
このシンプルな違いが、使い勝手や効果に大きく影響します。
では、それぞれのメリット・デメリットについて、紹介していきましょう。
メリット
・歯と歯の間にスムーズに入る
・初心者でも扱いやすく、切れにくい
・繊維がまとまりやすく、操作中にバラけにくい
デメリット
・プラーク除去力は「ワックスなし」よりやや劣る
・滑りが良い分、しっかり擦らないと効果が薄くなる
メリット
・歯の表面に密着しやすく、歯垢除去効果が高い
・繊維が広がってこすり落とす力が強い
デメリット
・歯と歯の隙間に通すときに引っかかりやすい
・慣れないと糸が切れたり毛羽立ったりする
・狭い隙間には入りにくいこともある
ワックス付きフロスは、「とにかくフロスを習慣にしたい!」という人に向いています。
特に歯並びが密集している人や、フロス初心者にはおすすめです。
逆に、ワックスなしフロスは、「一歩進んだケア」を求める人向け。
すでにフロス習慣がある人や、歯周病リスクが高い人には効果的です。
さて、デンタルフロスについて触れたところで、イグノーベル賞の話に戻りましょう。
ビューモント氏らの研究は、一言で言えば、デンタルフロスの好みや使用習慣についての研究でした。
研究結果は、以下のような内容です。
定期検診の患者にワックス付きフロスと、ワックスなしフロスを試用してもらった結果、およそ8割がワックス付きフロスを好む傾向が見られたとのことです。
また、ミント風味とプレーンタイプを比較した場合には、ミント風味がやや好まれる結果でした。
フロスの使用習慣については、毎日使用している患者は約3割にとどまり、週1回以上使用している人を含めると約8割に達しました。
一方で、フロスを全く使用しない人も一定数存在しました。
購入傾向をみても、ワックス付きフロスが過半数を占め、ワックスなしは3割程度に留まっていたようです。
患者の多くが好み、実際に購入しているのはワックス付きフロスであることから、歯科専門家が推奨する際にはワックス付きフロスを勧める方が、患者の使用習慣を促し、毎日のフロス利用率を高める可能性があると結論づけられています。
この研究では、概ね「フロスを日常的に使いやすくするためにはワックス付きの方が実用的」という結果が出ました。
とはいえ、デンタルフロスの説明に挙げたとおり、自分の目的や使いやすさに合わせて、フロスを選べば問題ありません。
しかし、およそ30年前に行われたこの研究は、現代の私達一人一人とっても変わらない、大切な教訓を残してくれています。
それは、「フロスを使用する習慣が大切」ということ。
歯垢除去力の強いフロスを持っていたとしても、3日で使うのを止めてしまえば、意味はありません。
予防歯科では、「続けられること」が何より大切。
「自分に合っている」とは、「続けやすさ」も含まれているのです。
自分に合うフロスを探す一番確実な方法は、歯科医院で相談することです。
歯並びや歯肉の状態、歯周病リスクは人によって大きく異なります。
歯科医院では、歯科衛生士に実際にやり方を見てもらいながら、自分に合ったフロスを選ぶことができます。
ワックス付きかワックスなしか、どちらが正解というより、自分に合ったものを無理なく選ぶことが大事です。
笑いを誘った研究が、今は毎日のオーラルケアに役立つ大切なヒントを与えてくれている。
そんなところに、科学の奥深さと面白さがあるのかもしれません。
自分に合った歯ブラシやフロスが欲しい!
そんな方はぜひ一度、ひかり歯科クリニック枚方院へ。
歯科検診でご相談いただくのがおすすめです!
ご来院をお待ちしております!
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