
「痛くないなら、まだ大丈夫ですよね?」
「痛かったんですけど、最近痛くなくなったんです」
歯科医院で、こんな言葉を聞くことは少なくありません。
確かに、歯が痛まなければ「そこまで悪くないのでは」と感じるのは自然なことです。
しかし、「痛みが無い=健康」ではありません。
むし歯がかなり進行し、歯の神経が死んでしまって、痛みを感じないケースがあります。

むし歯は進行度によって段階がありますが、C3というステージに進むと、「歯の神経(歯髄)にまで達したむし歯」になります。
通常であれば、冷たいものがしみる、何もしなくてもズキズキ痛むなど、強い症状が出る段階です。
ところが、このむし歯の症状がさらに進むと、神経そのものが壊死し、痛みを感じなくなることがあります。
この状態になると、「前より痛くなくなった」「最近は何も感じない」といった理由で、「治った」「落ち着いた」と勘違いされてしまうことも少なくありません。
しかし実際には、歯の中では感染が進行し続けている状態なのです。
神経が死んだ歯で起きていること
神経が死んだ歯の内部では、細菌が増殖し、根の先に炎症を起こすことがあります。
これを放置すると、
・根の先に膿がたまる
・顎の骨が溶ける
・腫れや強い痛みが、ある日突然出る
・周囲の歯や歯茎に悪影響が及ぶ
といった問題に繋がります。
つまり、「今、痛みが無い」というだけで、安心できる状態ではないのです。
ですが近年は、「抜歯しない治療=良い治療」「抜歯する歯医者=悪い歯医者」といった、少し偏ったイメージが広がっているようにも感じます。
今回は、その考え方について、少し立ち止まって考えてみたいと思います。
抜歯は「失敗」ではなく「治療の選択肢のひとつ」
まず大前提としてお伝えしたいのは、抜歯は「治療に失敗した結果」ではありません。
歯科治療には、残す治療、抜く治療、経過を見る治療など、いくつもの選択肢があります。
抜歯はその中の一つであり、「最悪の手段」や「妥協」ではないのです。
重度の歯周病で歯を支える骨がほとんど溶けてしまっているケースや、根の先まで感染が広がり、何度治療しても再発を繰り返している歯を例にしましょう。
こうした歯を無理に残そうとすると、周囲にまで症状が広がるリスクが高くなります。
その結果、「抜かなかったことで、もっと大きな治療が必要になる」ことも、決して珍しくありません。
「抜歯しない」を売りにすることの落とし穴
「抜歯しない治療」という言葉自体が、悪いわけではありません。
実際、技術や材料の進歩によって、以前なら抜歯が必要だった歯を残せるケースが増えているのも事実です。
ただし、問題なのは、「抜歯しないこと」が目的になってしまうことです。
歯を残すために、
・治療回数が極端に増える
・成功率が低い治療を繰り返す
・長期的な予後を十分に説明しない
といった状況になるのは、必ずしも患者さんのためになるとは言えません。
大切なのは「抜歯しないかどうか」ではなく、「その歯を残すことで、患者さんの将来がどうなるか」です。
抜歯を選ぶことで、守れるものもある
抜歯の決断は、患者さんにとって大きな選択です。
しかし、その選択により、
・周囲の歯を守れる
・炎症の拡大を防げる
・治療期間や通院回数を減らせる
・将来的な治療計画を立てやすくなる
というメリットが生まれることがあります。
たとえば、問題のある歯を一本抜くことで、ブリッジやインプラント、義歯など、次の選択肢に進める場合もあります。
「今の歯一本」に固執しすぎないことで、お口全体の健康を守れることもあるのです。
本当に良い治療とは「きちんと説明され、納得できる治療」のこと。
私たちが考える「良い治療」とは、抜歯する/しないを一方的に決めることや、キャッチコピーに沿った治療をすることではありません。
レントゲンや検査結果をもとに、なぜ歯を残せるのか、逆になぜ抜歯が必要なのか、それぞれのメリット・デメリットや将来的に考えられるリスクをきちんと説明し、患者さんが理解・納得したうえで選択できることこそが、本当に大切な歯科医療だと考えています。
「抜かない」より「後悔しない選択」を
歯を抜く、という言葉にはどうしてもネガティブな印象がつきまといます。
ですが、抜歯は「諦め」ではなく、「次に進むための治療」の選択肢。
「抜歯しない治療」が合う患者さんもいれば、「抜歯した方が良い」患者さんもいます。
大切なのは、流行や言葉のイメージで判断するのではなく、今のご自身の状態に合った治療を選ぶこと。
ひかり歯科クリニック枚方院は、そのための情報と選択肢を、正直にお伝えする歯科医院でありたいと考えています。
「本当は抜いたほうがいいかもしれない、と言われた」
「抜歯しないと言われたけど不安が残る」
そんなときは、ぜひご遠慮無くご相談ください。
抜歯した場合、しない場合のその先を、一緒に考えていきましょう。
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